〈事業レポート〉ポップカルチャーを活用して関係人口拡大を目指す鳥取県倉吉市の取組
江戸から明治にかけての文化を色濃く残す一方で、近年はアニメツーリズム等ポップカルチャーを生かした観光促進を進めている鳥取県倉吉市。
今回、観光庁主導の「来訪意欲を増進させるためのオンライン技術活用事業」に採択された「現代版『里見八犬伝』倉吉のまちを巡るバーチャルオンラインツアー」では、地域にゆかりを持つ「南総里見八犬伝」を元にしたオリジナルストーリーを描き起こし、新たな観光コンテンツにする取組が進められています。
記録的な大雪に見舞われた年の瀬のある日、バーチャルオンラインツアーの舞台である倉吉のまちを訪ねました。
▼オリジナルキャラクターによる「倉吉八犬伝」
2014年にフィギュアのトップメーカーである株式会社グッドスマイルカンパニーの工場を誘致したことが、倉吉市がポップカルチャーによる地域おこしに取り組みはじめたきっかけです。
以降、倉吉博物館に約600体のフィギュアを集めた「フィギュア博覧会」の開催(2015年)や、人気Webコンテンツ「ひなビタ♪」の舞台「倉野川市」との姉妹都市提携(2016年)など、次々に斬新な企画を打ち出して話題を集めてきた倉吉市。こうした取組を推進する狙いと背景を、倉吉観光MICE協会の松田謙治氏は次のように語ります。
「観光庁が昨年打ち出した関係人口の創出を重視する“第2のふるさとづくり”というコンセプトは、まさに倉吉市がアニメツーリズムを通して目指すものと一致しています。というのも、通常の観光客は既にレッドオーシャンに近いという認識があり、今後はこれまでとは異なるPR施策によって、倉吉市と接点がなかった新しいファン層を開拓していかねばなりません。そこでターゲットとして見据えているのが、ポップカルチャーファンというわけです」
今回の取組では、倉吉市内の大岳院に祀られている里見忠義公とその家臣たちが「南総里見八犬伝」のモデルとされていることにちなみ、オリジナルの八犬士を創作した「倉吉八犬伝」を展開。ストーリーに沿ってリアルの倉吉のまちや観光資源、特産品等をガイドするバーチャルオンラインツアーを上映し、ポップカルチャーファンにアピールしています。
この取組に合わせて、倉吉市内の随所に「倉吉八犬伝」のポスターやポストカードの配布を行い、それを目当てに市内を巡るファンも少しずつ増えているのだそう。まさに、地域発のポップカルチャーを活用したファンづくりが行われています。
▼倉吉に強い愛着を持ってもらうために
「倉吉八犬伝」には、倉吉市内に実在する風景やショップ、飲食店を登場させることで、来訪意欲の増進につなげようという狙いがあります。
実際、映像を視聴した上で倉吉のまちを散策してみると、バーチャルオンラインツアーで見知った風景が次々に現れ、初めて訪れた人でも親近感を覚えるでしょう。たとえば「南総里見八犬伝」の元となった大岳院や、全国でも珍しい白いたいやきを売る米澤たいやき店など、通常の旅行ガイドを参照しながら巡る旅とは、一味違った感覚が味わえること請け合いです。
「バーチャルオンラインツアーを通して、予め倉吉市の風景や文化、飲食にふれることで、自然に予備知識を蓄えていただくことが重要だと考えています。そして『倉吉八犬伝』をきっかけに倉吉市を訪れていただいた方が、映像を通して見知った風景を歩き、店舗や街の人々と交流することで、この地域へのより強い愛着を感じていただければ理想的です。実際、肌感覚として、作品を通して最初から地域に対してポジティブな印象を持った状態で来訪されると、その後の交流も上手くいく傾向があるように感じています」(松田氏)
それがリピーターを増やすことにつながるのは言わずもがな。最終的には「祖父母や親戚の家を訪ねるように、何度も定期的に遊びに来てもらうことが目標です」と松田氏は語ります。
これまで育んできたポップカルチャーファンとの親和性の高さもあり、「倉吉八犬伝」への反響は上々で、倉吉市が生み出したオリジナルの八犬士は既に人気キャラクターになりつつあります。
「もちろん、映像を見て満足される層も一定数おられるでしょう。そこからいかに現地に足を運んでいただくかという大きな課題に対しては、引き続き向き合っていかなければならないと感じています」(同)
オリジナルの物語とキャラクターによって生み出される関係人口は、今後、倉吉のまちにどのような変化をもたらすのか。興味深く見守りましょう。
※オンラインツアーも視聴できる公式ウェブサイトはこちら>>>
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