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〈事業レポート〉バーチャルで体感する味園ユニバースビルの文化と歴史

 大型キャバレー「ユニバース」をはじめ、多彩な店舗を収容する複合商業ビルとして、高度成長期からにぎわいを見せてきた味園ユニバースビル。「ユニバース」は現在、その跡地が多目的ホールとして活用されるなど、令和の時代となった今も大阪ミナミ・千日前エリアのディープスポットとして注目されています。

 現在、その味園ユニバースビルを観光資源として活用しようと取り組んでいるのが、観光庁主導の「来訪意欲を増進させるためのオンライン技術活用事業」の採択事業の1つ「高度経済成長の象徴・大阪『味園ビル』3DVR化プロジェクト」です。

「味園ユニバースビル」3DVR化プロジェクト製作委員会の皆さんに、取組の舞台裏をお聞きしました。

▼オンラインで伝える味園ユニバースビルの過去と現在

 1956年にオープンした味園ユニバースビルは、一大歓楽施設として戦後の復興期を彩った千日前エリアのシンボルです。

 同ビルが刻んできた歴史を、現代のクリエイションで表現しようという今回の取組。主なコンテンツは、自由に回遊できる3D空間に往時の建築スケッチや写真、音源等を展示するオンラインギャラリー「Dive into the Universe」や、最盛期の「ユニバース」をCGで再現し、そのバーチャル空間を舞台に配信する音楽イベント「Live from the Universe」、更には気鋭の写真家たちが現代の視点で味園ユニバースビルを切り取った写真展「The Universe in a New Perspective」等で構成されています。

画面キャプチャ_VirtualUniverse

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※公式ウェブサイトはこちら>>>

 とりわけ先だって開催された第1回「Live from the Universe」は、多くの人に視聴され、プロジェクト自体がNHKをはじめとする複数のニュースメディアで取り上げられるなど、大反響を呼びました。

「バーチャルプラットフォームの設計、そしてその空間を用いた音楽イベントの開催と、いずれも初めての試みで、技術やノウハウ面でも困難の連続でしたが、盛況のうちに初回を終えることができ、ひと安心です。最も重視していたのは臨場感で、いかにリアルな体験をお届けできるかがポイントであると考えていました。皆さんそれぞれ視聴環境が異なるので、そうした制約の中でできるかぎりのことがやれたのではないかと感じています」

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 全4回を予定しているイベントの初回を終え、そう手応えを口にするのはCOSMIC LAB株式会社の高良和泉氏です。

「味園ユニバースビルでは今も50店舗ほどのBARが営業していて、日々、多種多様な人々が集まるスポットになっています。今回のイベントが従来の常連層以外にも幅広くこのビルを知っていただくきっかけになれば嬉しいですね」(高良氏)

▼制作過程で発掘された、往年の貴重な資料

 味園ユニバースビル全面協力の下に制作が進められたこの取組。その過程では、関係者にとっても思いも寄らない貴重な資料が多数発見されました。

「たとえば今回発掘された1950年代に『ユニバース』で催されたショーのフライヤーを見ていると、当時はラテンミュージックが大衆文化のひとつとして人気を博していた様子が伝わってきます。また、当時の新聞広告のスクラップ等も、戦後復興期のリアルなムードを伝える貴重な資料です。我々としてもこのビルのポテンシャルを再認識するいい機会になりました」(同)

 数多の偶発的な出会いに刺激を受けながら、バーチャル空間における味園ユニバースビルをどう表現するか、知恵を絞りつづけた制作陣。65年分の歴史を現在のクリエイションで発信する取組は、上々の成果を上げたと言えそうです。

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「特に新たに発掘された資料の数々は、このプロジェクトがなければ埋もれたままの可能性もあったものばかりですから、それだけでも今回の取組が持つ意味は大きいと考えています。また、往年の味園ユニバースビルの様子を、現代の若いクリエイターがどう見て、どう解釈するかを知る機会としても、非常に有意義であったと思います」(株式会社epigram・玉井裕規氏)

 なお、現代の写真家たちによる作品はオンラインだけでなく、ビル内でのリアル展示も同時に開催(※1月10日で終了)。展示された作品は写真集として発売もされ(※同じく1月10日で受付終了)、味園ユニバースビルに端を発するクリエイションは更に広がっていきそうです。

「配信を多くの人にご覧いただけたことで、味園ユニバースビルの歴史というのは世間にとっても関心のあるテーマだったのだなと感じています。また、バーチャル空間の中でもちゃんと文化を発信できることを、今回の取組によって示せたのではないかと思います。これを機に、アフターコロナには更に多くの人が集まる場所になれば幸いです」(高良氏)

 デジタル技術によって実現した今回のプロジェクト。味園ユニバースビルは令和の時代においても、引き続き文化の発信拠点として親しまれるていくことになりそうです。

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