リフトやレストランのリアルタイムな混雑状況をお知らせして、ニセコの周遊をより快適に!
スノーシーズンには世界中から観光客が集まり、高いインバウンド需要を誇るニセコエリア。しかし、良質なパウダースノーが好評な一方で、季節の繁閑差によりサービス品質の向上が難しいなど、課題も少なくありません。
そこでニセコエリアスマートリゾート推進コンソーシアムでは、倶知安町・ニセコ町・蘭越町の3つの自治体にまたがるニセコエリアにおいて、更なる観光客の消費行動促進を目指して、観光関連施設の連携強化とデータの活用に取り組んでいます。
▼事業の概要
▼グリーンシーズンの観光開発が急務
ニセコエリアの課題を考える際、まずスノーリゾートに付き物である冬と夏の繁閑差が大きな問題となります。倶知安町・観光商工課観光推進係の沼田尚也氏は次のように語ります。
「ニセコではこれまで、繁忙期である冬場の労働力に関して、ワーキングホリデーの外国人に頼るなど、季節労働的な短期の人員で賄ってきました。しかし、これでは毎年スタッフが入れ替わることになり、どうしても長期的な育成ができず、結果としてサービスの品質が停滞してしまいます」
たとえば飲食店では、短期労働の外国人スタッフが日本語メニューを完璧に覚えるには時間が足りず、しばしばオーダーミスが発生していたと沼田氏は言います。
「こうした課題を解消するには、閑散期であるグリーンシーズンの観光を強化して、1年間の安定した雇用を生むことが大切だと考えています。たとえばワーケーションの誘致やジップラインなどのアクティビティといったコンテンツの導入で、夏場の集客アップを民と官の連携で目指します」(沼田氏)
実際にニセコでは昨夏、ニセコHANAZONOリゾートがゲレンデの斜面に光のアートワークを展開する「Mountain Lights (マウンテンライツ)」を企画し、好評を得たばかり。夏場の旅先としてのブランディングも着々と進められています。
※「NISEKO UNITED(ニセコユナイテッド)」公式Webサイトでは、スノーシーズンだけでない四季折々のニセコエリアの魅力について発信しています。
そしてニセコエリアスマートリゾート推進コンソーシアムでは今回、こうした誘客の施策と並行して、地域データの収集・分析を行う仕組み作りに取り組んでいます。
▼観光客の自然な行動変容を目指して
「今回のプロジェクトでは、予約前・出発前・滞在中(旅ナカ)の3つのフェーズにフォーカスし、現状はバラバラに点在している観光施設やアクティビティ施設、そして情報サイトを1つのプラットフォーム上に集約し、観光客の満足度向上に繋げます。具体的には宿泊データや観光施設の稼働状況データ(混雑状況)、二次交通データなどを一元管理し、マップ上で見える化して観光客の皆さんに活用して頂くものになります」(株式会社JTB 北海道事業部 営業第四課 陳兆鵬氏)
そこで開発されたツールの1つが、エリア内の4つのスキー場をビジュアル化したトレイルマップです。これは運行中のリフト情報が一元化されているだけでなく、シャトルバスの運行情報やレストハウスの混雑状況を可視化し、リアルタイムで発信するものです。
「特に二次交通データに関しては、荒天時にはタクシーが不足しがちなため、バスの運行に合わせて買い物や食事を楽しめるように情報を整備することは有意義だと考えています。たとえば『バスが来るまで30分あるから、今のうちにお土産を買いに行こう』などと、観光客の行動変容を促すことが可能になるわけです」(陳氏)
また、リフトの運行状況やバスのアニメーションだけでなく、飲食店や観光施設の営業情報及び混雑状況(主要駐車場、一部レストハウス)を発信し、スノーシーズンのピークであっても極力混雑を避けて旅ナカをプランニングできることは、観光客の満足度向上に大いに寄与するでしょう。
※トレイルマップはニセコエリア観光情報集約マップ「NISEKO DIGITAL RESORT MAP」からもアクセスできます。
「更に、BtoB向けのデータ収集・分析事業プラットフォームにより、1年を通しての観光需要の予測が可視化されるのもポイントです。これにより繁閑のタイミングが見通しやすくなり、従業員のシフト調整はもちろん、飲食店の場合はフードロス対策にも繋げることができます」(同)
こうした取組が繁閑差を解消し、結果として安定した労働力の確保とサービス品質の向上が期待されます。
なお、今回はニセコで実証実験が行われますが、この仕組みを「ゆくゆくは北海道全域に横展開していきたい」と陳氏は語ります。
「我々にとっての理想は、このシステムの導入で皆さんの行動がセンセーショナルに変わることではなく、観光やアクティビティを楽しんでいる中で、いつの間にか混雑と無縁になっていたり、スムーズに移動できるようになっていたりという、自然な行動に満足度が上がっていくことです。インバウンド需要が戻りつつある今、今回の実証実験を通してより効果的な観光戦略を考えていきたいですね」(前出・沼田氏)
まずは今冬のスノーシーズンにどのような成果が得られるのか、期待しましょう。
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