海をまたぐ2エリアの周遊促進を目指す、関門海峡のポートマネジメント
福岡県北九州市と山口県下関市にまたがる関門海峡エリアは、海外からのクルーズ客も多く訪れる人気観光地です。しかし他の観光地と同様に、コロナ禍によるダメージと無縁ではありません。
2つの自治体にまたがる関門エリアの情報の共有、そしてエリアを越えたマーケティング戦略の立案は、観光産業の復興において急務と言えます。これまで連携が難しかったこのエリアの改革を目指し、誘客や周遊促進による新たな観光戦略を推進する関門海峡港湾観光連絡協議会及び一般社団法人海峡都市関門DMOの代表、巖洞秀樹氏に話をお聞きしました。
■事業の概要
■最大の障壁は行政区をまたいでいること
「門司港レトロ」として港町の風景が好評を博す門司港。そして名産のふぐが全国的に知られている下関。これら2つの地域を隔てているのが関門海峡です。両エリアは「関門連絡船」に乗れば5分で渡ることができ、「関門トンネル人道」という海底トンネルで繋がっているため、徒歩や自転車でも行き来できるのが特徴です。
全国的にも珍しい移動の動線を持つ関門海峡エリアは、観光地として十分なポテンシャルを備えているように見えます。しかし巖洞氏は、地域の課題について次のように語ります。
「門司港レトロなら門司港レトロだけが旅の目的になりがちで、なかなかエリア全体、あるいはエリアをまたいだ観光につながらないことが、長らくこの地域の課題とされてきました。そして何より問題なのは、関門トンネル人道というユニークな移動の動線がありながら、これを実際にどのくらいの人たちが使い、どの程度の人流が発生しているのか、データ収集すらできていなかったことでしょう」
異なる行政区をまたいでいることが障壁となり、これまでデータの収集・分析すらままならなかったと語る巖洞氏。そこで両エリアをトータルにマネジメントすることで、「エリア内の点と点を結び、一大観光地を目指します」というのが今回の取組の目的です。
「具体的には、Wi-FiやBluetooth等のスマートフォンの電源がオンになっていれば感知できるセンサーを交通機関の施設に配備し、人の流出入を測定します。福岡空港や博多駅はもちろん、新大阪駅、広島駅、下関駅、小倉駅といった新幹線駅、北九州空港や宇部空港、さらにはフェリーの発着場や高速道路まで網羅する予定です。これにより人の流れを数値化できれば、新たな観光戦略のための貴重な情報源となるはずです」(巖洞氏)
なお、実証期間中にはJR西日本が、広島発着のツアーキャンペーン「#君と関門」や「名探偵コナン関門海峡ミステリーツアー」といったイベントを実施しているため、多くの人出が予想され、人流データの蓄積が期待されます。
※開催中のイベントの詳細は以下のURLよりご覧いただけます。
「#君と関門」https://www.jr-odekake.net/navi/kimitokanmon/
「名探偵コナン関門海峡ミステリーツアー」https://www.conan-tour.jp/
■「海峡都市・関門」を世界に向けて発信!
また、この取組によって得られた人流データは、専用システムを用いてダッシュボード上で見える化し、このエリアを訪れる観光客の実態分析に活用します。
観光客がどこから、どのような交通手段で、何を求めてやって来たのかが鮮明になれば、新たな課題の掘り起こしと新たな観光資源の開発につなげることができます。同時に、地域の情報発信やクーポン配布など、旅前の充実を図る施策と合わせて、観光客の回遊を促します。
「私たちが目指すポートマネジメントとは、人流を交流に変えること、そして“海峡都市・関門”の魅力を世界に向けて発信することです。そのためにはクルーズ船の誘致は重要な施策の1つですが、関門海峡は1日に4度も潮流が変わる特殊な場所で、そのため北九州に船が来られないタイミングというのがあります。今後はそこで、『では対岸の下関側にどうぞ』と言える状態を作ることが理想ですね」(同)
人流のデータ等に基づいた周遊促進やマーケティング施策を通じて観光地の経営を確立するのは、その第一歩であると語る巖洞氏。
「これまでの反省として、この地域は官民どちらも観光に対する知識があまりにも足りていなかったことを痛感しています。そのためにも今回のデータを活用した取組の意義は大きく、これから迎える更なる人口減に対抗するために、観光産業を地域の収入の柱に育てていかなければならないと考えています」(同)
関門海峡のポートマネジメント。取組の成果に期待しましょう。
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こちらもぜひご覧ください!
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