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街中に恐竜が出現!「自動運転 × xR」で八幡東田エリアをテーマパークに

 世界遺産に登録されている「官営八幡製鐵所」や生命の進化の道筋を展示する「いのちのたび博物館」など、多くの見どころを擁する北九州・八幡東田エリア。しかし、その充実度とは裏腹に、近年は集客の伸び悩みが課題とされてきました。

 そこで、そうした課題を解決するために進められているのが、観光庁が主導する「これまでにない観光コンテンツやエリアマネジメントを創出・実現するデジタル技術の開発事業」に採択された「5G・自動運転・xRが創る『どこでもテーマパーク』」事業です。

 5Gや自動運転、xR等の先端技術を駆使し、エリア全体をテーマパークのごとく演出することで、観光地としての魅力を底上げしようというこの取組。その全容について話を聞きました。

▼自動運転モビリティとxR技術で先進デジタルアトラクションを

「2017年末に『スペースワールド』が閉園して以降、八幡東田エリアは人流が大きく変化し、今ある観光コンテンツを生かせているとは言えない状況が続いています。しかし、世界遺産『官営八幡製鐵所』をはじめ、本来は魅力的な地域素材に事欠かないエリアであることから、工夫次第で従来以上の客足を呼び込むことは十分に可能であると我々は考えています。そこで12月中旬頃から予定している実証実験では、自動運転モビリティとxRの技術を組み合わせたライド型先進デジタルアトラクションを準備しています」(株式会社コンピュータサイエンス研究所・林秀美氏)

 市販のモビリティに自動運転機能を搭載し、xRゴーグルを装着して乗車することで、ライド型の先進的なアトラクションを実現する今回の取組。xRを駆使して表現するコンテンツは、大きく2つ用意されています。

「1つは、『いのちのたび博物館』に隣接する大通公園や芝生広場等のオープンエアの空間に、巨大な恐竜をヴァーチャルで出現させようというものです。同博物館は恐竜の骨格展示等が好評を博し、恐竜ファンが多く足を運ぶスポットでもあります。xRで街中にリアルな恐竜と遭遇する体験は、大きなインパクトを伴うものになるでしょう。そしてもう1つは、脚本家の倉本聰さんのプロデュースによる『地球の道』と『官営八幡製鐵所』の紹介を複合したVRガイディングツアーです。こちらは地球誕生から産業革命までの46億年の歴史を、460メートルの道を進みながらヴァーチャルに体験するスタディツアーになります」(林氏)

 特に高齢者や足の不自由な人が乗る場合、モビリティは安全性が何よりも重要です。屋外環境となれば尚更で、今回の自動運転モビリティでは、新たに開発する路面監視装置を実装予定。これも実証実験の大切なポイントです。

「屋外の場合、日照条件の違いなどから、カメラ機能だけで状況を正確に認識するのは非常に困難です。そこで今回のモビリティではカメラだけでなく、GPSや各種センサー、そしてこの路面監視装置を組み合わせて用いることで、体の不自由な方でも安心して移動できる環境を用意します」(久留米工業大学・東大輔氏)

 なお、今回の実証実験のために開発されたこの路面監視装置は、特許申請も行っているという特殊なもの。これにより予期せぬ段差や人混みなど、路上における様々なリスクを事前に察知して回避することができ、誰でも安全に街を回遊することが可能になります。

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▼「AI観光コンシェルジュ」でエリア内の回遊性をアップ

 こうしたライド型先進デジタルアトラクションに加えて、八幡東田エリア内の各コンテンツを有機的に繋げるために、スマートフォン向けのアプリ「AI観光コンシェルジュ」の開発も同時に進められています。

「自動運転モビリティや地域団体等から得られる情報をもとに、個々の趣味嗜好や属性に合わせて情報をAIがレコメンドすることで、誰もがエリア内を快適に楽しめるようになります。サブリアルタイムな情報に基づいているため、ユーザーは効率的な観光が可能になるほか、クーポンの発行やEC決済等もこのアプリ上で行えるようにする予定です」(東氏)

 この「AI観光コンシェルジュ」はモビリティを利用する人だけでなく、徒歩で移動する人にとっても観光の際の強力なツールになるでしょう。

 このアプリとライド型先進デジタルアトラクションの組み合わせにより、八幡東田エリア全体を1つのテーマパークのような楽しい空間にアップデートさせようという今回の取組。成功のカギを握るのは、「どれだけ没入感を演出できるか」であると林氏は語ります。

「リアリティを最大限に表現するためには、恐竜が出現する場所やタイミングも重要で、現在はそうしたシナリオの部分を慎重に検討している最中です。例えば目の前にティラノサウルスが現れた際、その衝撃をモビリティ側に伝えるようなギミックも準備中で、とにかくこれから実証実験のスタートまでに、演出面はできるかぎりの工夫を凝らしたいと考えています」(林氏)

 技術面では、移動体であるモビリティの位置をどれだけ正確に把握できるかが最大の障壁で、まさにこの点こそが今回一番のチャレンジなのだと林・東両氏は口を揃えます。

 今回の技術が理想な形で完成すれば、ほかの地域への横展開も考えられるはず。魅力的なコンテンツを擁しながら、集客不足に悩む各地の観光地にとって、注目すべき事業と言えるでしょう。

20210707v1_観光DX-事業概要説明書(どこでもテーマパーク)

最後に…
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