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DXによるリブランディングで、那須エリアをサイクリストの聖地に

 豊かな自然を擁する栃木県・那須エリアは、滞在型のサイクリングフィールドとして大きなポテンシャルを持っています。しかし、サイクリング事業者と宿泊施設や飲食店等の周辺施設の連携が十分ではなく、サイクリングの目的地として認知度を高められずにいる課題を抱えています。

 そこで那須地域サイクリングDX推進コンソーシアムでは、サイクリングを観光誘客と結びつけるため、地域全体のリブランディングに着手。Webプラットフォームの構築により、ファンマーケティングの実現を目指します。

■事業の概要

■サイクルイベントを観光の起爆剤に

 那須エリアがサイクリングフィールドとしてのブランディングを開始したのは2011年のこと。発端は東日本大震災で、観光消費が大きく落ち込んだことから次のような取組を始めています。

 「東日本大震災で交通インフラが断たれとことで、那須エリアの観光産業は深刻なダメージを被りました。そこで『那須高原ロングライド』というサイクルイベントを新たに立ち上げたところ、自粛ムードが残る中、予想に反して約700名もの参加者が集まったのです。『那須の観光を応援するために来た』と言うサイクリストの方も多く、こうした反響に勇気づけられて、観光産業の起爆剤にしようという機運が高まりました」(那須高原リゾート開発株式会社・鈴木和也氏)

 有志で立ち上げたこの「那須高原ロングライド」は、翌年以降も継続的に開催され、更に「那須ブラーゼン」という、地域密着の自転車ロードレースのプロチームも発足。那須エリアはにわかにサイクリストが集まる人気スポットとなりました。

※「那須高原ロングライド」公式Webサイト:
  https://nasukougenlongride.com/
 「那須ブラーゼン」公式Webサイト:
  https://nasublasen.com/

 「起伏の多い地域は自転車に不向きと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。森林の中を走り抜け、視界に大きく山並みが広がる立地というのは、全国でも稀有なロケーションです。これも那須の標高差があればこそで、うまくブランディングすれば冬季の誘客にも繋げられるのではないかという手応えを得ました」(鈴木氏)

写真:那須地域サイクリングツアーの様子

 実際、コロナ禍前にはインバウンド需要の拡大もあり、「那須高原ロングライド」を始めとするサイクリングイベントに、およそ2,000名以上の参加者が集まるようになったと鈴木氏は語ります。

 しかし、有志による取組だけでは限界があり、より高い満足度を提供するサイクリング商材を造成し、那須エリア全体を活性化させるためには、地域の事業者が一体となってDXに取り組む必要があります。

 そこで新たなファンマーケティングを確立するために結成されたのが、那須地域サイクリングDX推進コンソーシアムでした。

■目指すのは国内セルフガイドツアーのパイオニア

 コンソーシアムの一角、株式会社ライドエクスペリエンスの山本徹也氏は、プロジェクト立ち上げの経緯について次のように語ります。

 「コロナ禍前には海外からも多くのサイクリストが、主に当社のサイクリングツアーへの参加を目的に那須へやってきました。インバウンドのお客様の多くは、ガイドが先導し、サポートカーが伴走するフルサポートのツアーに参加されますが、少人数グループのお客様からは、知らない土地でも迷うことなくサイクリングが体験できるよう、個々の走力や興味のあるポイントに応じてカスタマイズされたルートを自分たちだけで走ることのできる、『セルフガイドサイクリングツアー』を用意してほしいという要望もいただいていました」

 海外ではガイドが先導するサイクリングツアーだけでなく、マップなどを用いて予め設定されたルートをガイド無しで走るセルフガイドサイクリングツアーが広く普及しているのだと山本氏は言います。

 「本来、ガイドが案内しなければまず通ることのないマニアックな小道も、最新のナビゲーション機器やアプリ等を用いることでルートに盛り込むことができます。さらに、ガイドの人件費がかからない分、少人数でも比較的安価に実現できるのがセルフガイドサイクリングツアーのメリットです。景色の良い小道が縦横無尽に走る那須エリアの特性を、デジタルを活用することで日本のセルフガイドサイクリングの聖地として発信し、サイクリングの目的地としての那須のブランディングを進めていきたいと考えています」

 具体的には、サイクリスト向けの新たなWeb プラットフォームを構築するのが今回の取組。ユーザーそれぞれの走力や興味、季節、交通手段等々に応じて情報を検索できるほか、那須特有の多彩な脇道を含んだサイクリングルート情報を整備し、これを世界中で普及しているサイクリング専用のマップ&ナビゲーションアプリと連携させてプラットフォーム内に実装します。

 これにより、有料会員になれば誰もが自分の好みに合った那須でのサイクリングを、セルフガイド形式で楽しめる仕組みを構築。周辺の飲食店や宿泊施設、観光スポットに関する情報はもちろん、手ぶらでサイクリングを楽しんでもらうための手荷物預かり所や、万一の怪我や車両故障に備えたサイクルレスキュータクシーの整備が並行して進められるなど、取組は多岐にわたります。

画像:那須サイクリングWebプラットフォーム構成ツリーイメージ

 「このWebプラットフォームにより、ガイドが伴走せずとも、お客様には思い思いに那須エリアを楽しんでいただけます。特にセルフガイドツアーは海外では需要が大きいので、那須エリアが日本でのパイオニアになれれば嬉しいですね」(山本氏)

 なお、このプラットフォーム上では、本格派のサイクリストだけでなく、ビギナー向けのツアー案内も行う予定。更なるサイクリング需要の掘り起こしを狙います。

※今回、那須地域サイクリングDX推進コンソーシアムが構築したWebプラットフォームは「NasuCycling.net」として2月10日にプレオープン。グランドオープンに向けた機能拡充も検討が進んでいますので、ぜひご注目ください!
 https://www.nasucycling.net/

画像:(左)「NasuCycling.net」メインコンテンツページ
/(右)サイクリング体験ツアー検索ページ
画像:「NasuCycling.net」会員限定のクチコミ投稿機能

 「那須エリアの観光産業も、コロナ禍からの回復に努めている真っ最中です。そんな今だからこそ、DXの双方向性を生かしてサイクリストの皆さんとのコミュニケーションを強化し、更なるファンづくりを行う必要があります」(鈴木氏)

 最後に、コンソーシアムに参加する那須ブラーゼンの元プロ選手、樋口峻明氏は取組への期待を次のように総括します。

 「那須エリアというのは、細い道がたくさん入り組んだ地形であるため、車ではなく自転車で走らなければ出会えない景色やショップがたくさんあります。私自身もこの地域で様々な発見を得ましたが、今回そうした観光情報をルート案内とともに発信することで、訪れる方々に那須の魅力を余すことなく伝えられればと思います」

 自転車を切り口としたDXがどのような成果を生み出すのか、期待しましょう。

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本事業の公式Webサイトでは、他にも各地域で取り組まれている事例を順次掲載しています。
こちらもぜひご覧ください!
【観光DX事業公式Webサイト】https://kanko-dx.jp/
【観光DX事業公式Twitterアカウント】https://twitter.com/digitalxproject
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