城崎温泉の宿泊施設でデータを共有することで、地域一体でのマーケティングを可能に
約1300年の歴史を誇り、豊かな自然と歴史が織りなす情緒で人気を博す兵庫県豊岡市の城崎温泉。しかし、関西圏での知名度の高さに反し、観光消費額の低さや平均宿泊日数の少なさが長らく課題とされてきました。
そこで豊岡観光DX推進協議会では、城崎温泉の宿泊施設においてPMS(プロパティマネジメントシステム。ホテルや旅館の運営管理システムのこと)の統一化を図り、確かなデータに基づいた観光戦略の底上げと観光消費額の拡大を狙います。
■事業の概要
豊岡観光DX推進協議会の皆さんに、その具体的な取組についてお聞きしました。
■すべての事業者が一体となっておもてなしする城崎温泉
「コロナ禍によってインバウンド需要はまったくの0になり、国内の旅行者も一時期はほとんど見られませんでしたが、最近になって、全国旅行支援などの施策の効果もあり、少しずつ城崎温泉への客足も戻ってきました。この冬は地域の名産である松葉蟹などを目当てに徐々に活気づき始め、我々としても安心しているところです」
そう語るのは協議会の一端を担う、豊岡観光イノベーションの一幡堅司氏です。少しずつ好転するこの状況を活かさない手はなく、協議会ではCRMシステムの構築を急ピッチで進めています。地域一体となって進める豊岡にとって、鍵を握るのは城崎温泉に根付いた独特のコンセプトです。
「城崎温泉では何十年も前から、街全体を1軒の旅館とするコンセプトが浸透しています。鉄道駅を玄関口とすれば、温泉街のメインストリートは旅館の廊下に相当し、客室のように多くの旅館が立ち並んでいます。更に言えば、点在する土産物屋は売店、街に7つある外湯は大浴場といった捉え方ですね」(一幡氏)
あたかも1軒の旅館のように、地域が一丸となってのおもてなしが実践されているのが城崎温泉の特徴です。
例えば、エリア内のほとんどの宿の宿泊者を対象に、7つすべての外湯で入浴できる共通パス「ゆめぱ」の導入や、駅前の案内所に荷物を預ければ宿泊宿まで運んでくれるサービス(帰りも同様に、駅前の案内所まで運搬サービスあり)、更には急な雨に備えて駅や外湯には誰もが使える置き傘が配されるなど、旅行者にとって至れり尽くせりの環境が整えられています。
※城崎温泉観光協会公式サイト>>>https://kinosaki-spa.gr.jp/
1つの地域がこれほど一体感を持って事業に取り組んでいる例は、全国でも稀です。
「なぜ地域の事業者がまとまっているのかというと、1つには城崎温泉の源泉は湯量が限られていることに理由があります。つまり、限られた湯量を皆でいかに有効活用するかという考え方が古来より根付いており、互いに協力し合う土壌があるわけです」(豊岡市役所・島津太一氏)
一幡氏も、「城崎温泉では家族経営の宿が多いため、コンセプトが継承されやすかった面もあるでしょう」と補足します。
■PMSの統一化で更なる一体感を
こうした共存共栄の精神による強みを活かし、さらに一体感を持って経営を行うべく、協議会では宿泊施設のPMSの統一化を図ります。
「これまでは各宿泊施設に導入されているPMSが宿により異なっていましたが、今回これを統一化することで、より正確でタイムリーな情報を可視化して共有したいと考えています。宿泊者の属性データ等を取りまとめ、ニーズを正確に把握、分析することで、旅行者の満足度向上はもちろん、季節による繁閑差の解消や客単価のアップに繋げられれば理想的です」(一幡氏)
こうした取組においては、各事業者に理解を求め、協力体制を整えることがネックになりがちですが、城崎温泉では計画がスムーズに進んでいると一幡氏は語ります。
「もちろん、PMSとは何かという点から説明しなければならない事業者もおられますが、この機会にデジタルのメリットを知っていただき、導入の好機と考えていただけるよう尽力しているところです。この点、城崎温泉ではもともとの一体感に加え、新しいことにも積極的に取り組んでいこうという気質が根付いていることに助けられています」(同)
「1300年の長い伝統と共に継承されてきた、この地域をより良くしていきたいという想いが、計画を後押ししていると感じます」(島津氏)という城崎温泉。この事業を通して、観光消費額の向上やリピーターの獲得、長期滞在者の増加に繋がることを期待しましょう。
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