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東北地域でより長期の滞在をしてほしい!DMP・CRMを活用した取組

 東北地方はすべての県に新幹線の停車駅があり、道路の整備も進んでいるため、本来旅行者にとって中長期滞在に適したエリアです。しかし、東北の観光目的の国内平均泊数は1.58泊と、全国平均(1.70泊・2019年実績)よりも低いのが実情。いかに周遊してもらうかが課題とされてきました。

■事業の概要

 東北6県に新潟県を加えた7つのエリアを対象に、自治体の枠を越えた広域連携によってさまざまな施策を展開する、一般社団法人東北観光推進機構・理事長の紺野純一氏とDX戦略部の佐藤惇氏に取組の全容をお聞きしました。

■コロナ禍と人口減少を迎え撃つ3つの取組

 今回の事業は、データを活用して中長期滞在・周遊促進を図るため3つの取組を連動させています。
 1.「域内共通データベース(東北観光DMP)」による観光マーケティング
  データの一元管理
 2.「Base!TOHOKU」という統一ブランド化による東北広域の中長期滞在の
  定着
 3.「TOHOKU Fan Club」というCRMシステムによる東北のロイヤルカスタ
  マーの獲得・育成
 ※「Base!TOHOKU」及び「TOHOKU Fan Club」については以下のURLより
  ご覧いただけます。
  「Base!TOHOKU」https://base.tohokukanko.jp/
  「TOHOKU Fan Club」https://tohokufanclub.com/

「東北観光DMPには、東北観光推進機構および参入自治体のWebサイトやSNSのアクセスデータのほか、動態データ、消費購買データ、公的統計データ、アンケートデータなどが格納されており、必要な情報を簡単な操作で確認することが可能です。今年度はこれを具体的に施策へと活用するフェーズに入り、『TOHOKU Fan Club』から得られたユーザーの属性データなどと連携しながら、東北のロイヤルカスタマーの獲得を目指します。併せて、各地域の温泉宿泊施設を軸とした中長期滞在プランを造成し、統一ブランドの『Base!TOHOKU』で販売することで、域内周遊を促進させ、観光消費額の底上げを図ります」(佐藤氏)

 具体的には、青森県の浅虫温泉ではSUP(サップ)体験、宮城県の秋保温泉・作並温泉では工芸づくり体験、福島県の飯坂温泉ではフルーツ狩り体験等、8つのモデル地域を設定して実証事業を進めています。

 つまり、東北観光DMPを活用してコロナ禍における旅行ニーズの分析を行い、分析結果を踏まえた体験コンテンツ付きモニター宿泊プランの造成・販売により、地域の周遊促進を図るというのが今回の狙い。

東北観光DMPにおける可視化されたデータの例(データ提供元:株式会社Agoop)
画像:モデル地域スポット紹介の一部
画像:モニター宿泊プランの例

  これらの取組はいずれも、コロナ禍や地域の人口減少による観光産業のダメージを打開するため、昨年度に立ち上げられたもの。こうしたデータの有機的な活用により、「ロングステイといえば東北、というイメージを浸透させたいですね」と佐藤氏は言います。
 
 東北域内には、まだまだ認知されていない魅力的なコンテンツが多く存在しています。そこで、こうしたコンテンツを宿泊と組み合わせて発信していくことで、コンテンツの認知度向上と観光消費額の増加を図る狙いがあるのです。

  そのためにも今回の実証事業は重要で、紺野氏は取組への期待を次のように語ります。
「なぜ東北地方が魅力的なコンテンツを多数擁しながらも“点”の観光に偏重していたかというと、地域のネットワーク化が遅れていたためと考えられます。これを“面”につなげ、2泊、3泊とロングステイに発展させるためには、観光客が県境を跨いで出かけたくなる仕掛けが必要です。広域連携DMOのミッションもまさにそこにあると考えています」

■数年計画で観光産業が自走できる地域を目指す

 重要なのは、「施設や観光スポットごとの個別データではなく、そのエリアにおける最大公約数的なデータを元に戦略を立てること」だと紺野氏は言います。
 
「しかし、これまでは情報が県境に阻まれるケースもあり、広域で“商流”を構築することができませんでした。地域としての魅力がマーケットに伝えきれずにいた弱点を、今回の取組を通して解消していきたいと考えています。もちろん、誰か1人のプレイヤーが頑張ったとしても、こうした連携は困難でしょう。その点、観光マーケティングデータを共有しながら、広域連携DMOのスケールメリットを生かし、各地のプレイヤーが連携しやすい状態をつくることが大切だと思います」(紺野氏)
 
 ポイントは、従来のアナログ的な手法とデジタルの利点をいかに組み合わせるか。今回の事業計画はあくまで端緒に過ぎず、コンソーシアムでは構築したデータベースを元に、これから数年をかけて、各地域を自走させることを目標に掲げています。
 
 東北観光が今後どのように変わっていくのか、ぜひご注目を。

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本事業の公式Webサイトでは、他にも各地域で取り組まれている事例を順次掲載しています。
こちらもぜひご覧ください!
【観光DX事業公式Webサイト】https://kanko-dx.jp/
【観光DX事業公式Twitterアカウント】https://twitter.com/digitalxproject
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