株式会社やまとごころ・村山慶輔氏が語る、観光再生のためのサスティナブルツーリズムとは?
来る12月2日15時30分より、観光DXを推進する観光庁観光資源課 新コンテンツ開発推進室の佐藤司氏、株式会社やまとごころ 村山慶輔氏、NTTコミュニケーションズ株式会社 戸松正剛氏がクロストークを展開するウェビナーを開催します。
そこで今回は登壇者の1人である、「インバウンドで地域を元気に」をミッションに事業を展開している株式会社やまとごころの村山氏に、コロナ禍で疲弊した日本の観光業が再生するためにいま必要なもの、そしてこれからの観光業の在るべき姿についてお話を聞きしました。
なお、ウェビナーでのトークテーマは、皆様からの質問をもとに決定します。そこで本記事を読んでの感想や疑問など、ウェビナーで聞いてみたいテーマについて皆様からの質問を募集します。質問フォームより、ぜひ皆様の声をお聞かせください!
▼引き続き回復基調が予想される国内観光シーン
――国内においては、新型コロナウイルス感染症対策のためのあらゆる制限がひとまず解除されました(※取材時)。これから日本の観光シーンはどう動いていくと予想していますか?
まず国内観光について言えば、リバウンド需要もあって急速に客足を取り戻すことになるでしょう。もちろん第6波への懸念はありますが、現状では新規感染者の数が抑えられており、年内はまだまだ旅行者も増えていくことが予想されます。
その反面、インバウンドに関してはいまだ制限を伴うため、少なくともコロナ前(2019年当時)の活況に戻るには、2024年~2025年までかかるのではないかと個人的には思っています。
――つまり国内観光についてはようやく光明が見えてきたわけですが、それでも感染リスクに敏感な地域が散見されるのも事実です。気兼ねなく他県に足を運べるようになるには、もう少し時間がかかりそうですね。
たしかにリスクヘッジに対する考え方に地域差があるのは事実です。しかし、ゼロリスクを目指すのは現実的ではありません。現状では疲弊していない観光地は皆無と言っていい状況ですから、一刻も早い人流と消費の回復を願っているのは、他ならぬ各地の観光事業者でしょう。
コロナ禍においても、部屋ごとに露天風呂を設けている旅館などは売上げをさほど落としませんし、ゴルフ場にいたってはむしろ売上げを伸ばしたところも少なくありません。観光業はただ収束を待つのではなく、いまこそデジタルを活用して積極的に情報発信していかなければ機会損失を起こしてしまいますから、ぜひ頑張っていただきたいですね。
――一方で少しポジティブな視点を持てば、リモートワークの浸透により、2拠点生活を選択する人が増えました。これにより観光へ向かう出発点が複数生まれ、これまで以上にローカルへの人流が生まれる……という予測は成り立たないでしょうか?
それは十分に考えられると思っています。人は新たな拠点の周辺で、土地のものを食べたり観光を楽しんだり、地域の人々と交流したりするはずで、それはそのまま経済活動に通じています。何より、そうした活動によって土地への愛着が生まれれば、積極的に友人知人を招き入れるようになり、さらなる人流を呼び込むでしょう。
その意味で、観光政策と移住政策を切り離さずに考えることは重要です。ところが、各自治体はそうした視点を持っていながらも、それぞれを担当する部署が異なるため、うまく施策に繋げられずにいるのが実情です。このあたりは縦割り行政の弊害で、街づくりの文脈と観光開発の文脈をいかに一致させるかが課題と言えます。
――そうした課題を解決するには、どうすればいいのでしょうか。
行政と民間が連携して取り組むしかないでしょうね。実際、最近ではDMO(観光地域づくり法人)が物販や移住促進を手掛けるケースも増えているように、コロナ禍を機に、人が来なければ稼げない観光モデルに、限界を感じている事業者は少なくありません。今後さらに、ECを中心にリアルの集客に頼らないビジネスは増えていくでしょう。
▼サスティナブルツーリズムを定着させるためには
――村山さんは以前から、観光再生の鍵を握るのはサスティナブルツーリズム(持続可能な観光)の考え方であると提唱されています。この理念は日本の観光業界にマッチするでしょうか?
日本人にはもともと「自然を守ろう」、「かぎりある資源を大切に」といった考え方が根付いていますから、私は十分にマッチすると考えています。「買い手よし、売り手よし、世間よし」という近江商人の「三方良し」の理念などは、サスティナブルの最たるものでしょう。誰か1人だけが得をするモデルでは、その商売は続かないことを日本人は昔から理解しているんです。
また、「立つ鳥跡を濁さず」ということわざがあるように、どこかの地域へ足を運ぶことで、その場所が前より悪い状態になることを嫌うのも、日本人の美徳のひとつです。これらはまさに、サスティナブルやSDGsに通ずるものですからね。
――なるほど。では、そうした考え方をさらに浸透させ、サスティナブルツーリズムを定着させるにあたり、現状の課題は何でしょう?
これは消費者と受け手、双方の意識が変わらなければ実現できません。現状ではとくに、消費者側のマインドにまだまだ意識改革の余地があると感じます。たとえば旅先でチェーンのホテルに泊まったり、大手小売店で買い物をしたりといった消費が目立ちますが、これらを地域の事業者に置き換えてもらう工夫が必要でしょう。
サスティナブルツーリズムで先行する欧州では、旅行者の多くが、消費する商品がどのようなルートで調達され、自分が落としたお金がどのようにその地域で分配されるのかを、常に気にする風土があります。富裕層はさらに顕著で、環境に配慮していない企業の商品は敬遠されるほどです。
日本でも近年では、学校の教科書でSDGsが取り上げられたり、環境や社会に配慮した商品を購入する「エシカル消費」が浸透し始めたり、欧州に倣った動きが見られます。今後はこの流れを維持し、いかにツーリズムにつなげていくが重要でしょう。
――また、観光業の復活には、デジタル技術の活用も欠かせないと思います。日本の観光シーンのDX化の進捗について、どう見ていますか?
DXの定義にもよると思います。たとえばある旅行会社では、それまでシニア会員に向けて紙の旅行パンフレットを送付していましたが、最近これをLINEで代用するようになりました。300名ほどの会員をグルーピングして、そこに旬の商品情報をポストするやり方で、会員は65歳以上の高齢層でありながら、毎回大きな反響があるそうですよ。
これはコロナ禍でお孫さんと会えず、LINEを使える高齢者が増えたことによる恩恵ですが、立派なDX事例と言っていいでしょう。何より、紙を使わなくなったことでコスト削減になり、環境にも優しいわけですから、いいことずくめです。
――たしかに、闇雲にDXという言葉を使うことで、デジタルへのハードルが上がってしまっている弊害はありそうですね。
SNSも同様ですよね。「インスタ映え」という言葉が生まれたことで、急激に集客を伸ばしたスポットは枚挙にいとまがありません。DXを難しく考えに、まずはSNSから始めてみればいいと思います。単純に、宿泊施設が旅行サイト経由で予約を受け付けることだって、広義のDXの一環なのですから。
――つまり、コロナ禍をただ停滞期として過ごすのではなく、次に向けて力を蓄える時間にあてる工夫が大切ですね。
そうですね。考え方次第でやれることは無数にあるはずですから、この時間をどう過ごすのかが、今後の成否を分けるのは間違いないと思います。経営を維持するために価格を引き上げる施設もありますが、これでは消費者が離れていくのは言わずもがなで、価格を上げるなら相応の価値を提供しなければなりません。
それと並行して、今後新たなパンデミックが起きた場合でも食いつなげるような新規事業を確立することが重要です。実際、感度の高い事業者は、コロナ以前からそうした試行錯誤を始めていました。DXはそのための有効な選択肢のひとつでしょう。
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