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NTTコミュニケーションズ株式会社・戸松正剛氏が語る、“稼ぐDX”に求められるものとは?

 来る12月2日15時30分より、観光DXを推進する観光庁観光資源課 新コンテンツ開発推進室の佐藤司氏、株式会社やまとごころ 村山慶輔氏、NTTコミュニケーションズ株式会社 戸松正剛氏がクロストークを展開するウェビナーを開催します。

 そこで今回は登壇者の1人である、ICTの活用によって社会課題を解決する「Smart World」の実現を目指す、NTTコミュニケーションズ株式会社の戸松氏に、「DX」の本質と現状の課題についてお話をお聞きしました。

 なお、ウェビナーでのトークテーマは、皆様からの質問をもとに決定します。そこで本記事を読んでの感想や疑問など、ウェビナーで聞いてみたいテーマについて皆様からの質問を募集します。質問フォームより、ぜひ皆様の声をお聞かせください!

戸松氏宣材写真_v3

▼空前のDXブームの背後にある課題

――最近では「DX2.0」という言葉も聞かれるようになりました。デジタルの浸透を感じさせる半面、DXという言葉が独り歩きしているきらいもあります。DXを取り巻く現況について、戸松さんはどうお考えでしょうか。

 おそらく、単に業務プロセスをデジタルに置き換えるだけでなく、トランスフォーメーションの本意として、経営改革にあてることを一部で「DX2.0」と表現されているのだと理解しています。しかし、こうした言葉が流布することによって本質を見失ってはいけないと思います。本質的に考えれば、DXとはもともとデジタルを用いてビジネスに変革を起こすことを指すはずで、単に業務の一部をデジタル化するだけなら、それはデジタライゼーションに過ぎません。その意味でDXには本来、1.0も2.0もないはずなんですよ。

 ただし、この本意は簡単な話でないのも事実です。DXでビジネスモデルを変革しようというのは、経営者が意思決定するレベルの話ですから、まだまだリモートワークすらままならないようなレベルの企業からすれば、DX以前の課題は山積しています。

――DXを推進する企業が増えている一方で、レベル的な格差が広がっていると。

 そうですね。これは“2階建て”の建物に例えるとわかりやすいと思います。1階、つまり基本的なデジタルリテラシーやセンスがなければ、2階、すなわち本質的なトランスフォーメーションの領域には行けません。まず1階部分を整備しなければ、2階にどんなツールを持ち込んだところで持ち腐れてしまうでしょう。

 1階部分で大切なのは、手近なデジタルツールをとにかく使い倒してみることで、デジタル技術の利便性や有用性を肌身で知らなければ、本当の意味でビジネスをトランスフォーメーションしようという発想には至らないでしょう。

――なるほど。ところが実態は、1階部分の整備を怠っている企業が多いわけですね。

 1階部分のDXとは、いわば借り物競争のようなものなんです。すでに巷には使えるソリューションが山のように存在していて、それをいかに必要機能として取り入れるかが重要です。しかし、そもそものデジタルリテラシーが備わっていなければ、2階部分のビジネスコンセプトを他業界や他サービスから「借りてくる」ところまで行きつかない。2階部分の考え方については、ウェビナーで詳しくお話しさせてもらえればと思います。

――観光業界も同様の問題を抱えているように感じます。

 観光業界においてもこの10~20年、多くの識者がデジタルの利活用について議論をしてきたはずです。それでもDXが遅れているのだとすれば、それは“借りてくる物”が間違っている可能性が高いと私は思っています。

 たとえば、密にならないレジャーとして、キャンプの人気が急速に高まっていますよね。そこで多くのキャンプ場が、受付などのオペレーションをできるだけ非接触で管理できるシステムを模索し始めましたが、事業形態にぴったり合うツールはなかなか見つかりません。かといって、0からシステムを開発するのはコスト面で現実的ではなく、結局は従来のオペレーションを維持しているキャンプ場ばかりです。

 でも、感度のいい事業者の中には、LINEを使ってうまくスマート化を図っているところもあるんです。LINEには実は、チェックイン機能や決済機能が備わっていて、もちろんコミュニケーションも取れます。つまり一切の設備投資をすることなく、すべての案内や手続きをオンライン化できるわけです。まずはこうした、手元のデジタルをとことん使いこなす意識を持つことが大切でしょうね。

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▼成功事例に学ぶ観光DXの可能性

――そうした下地があれば、さらに高度なデジタル化に向かうことができそうですね。

 その通りです。先程のキャンプ場の例で言えば、このレベルのDXを実践している事業者は、すでに次の一手に目線が向いているはずです。LINEを徹底的に活用した上で、「では、現状のツールで賄えない部分は何だろう」と。結果的に、1階すらままならない企業とはさらに差が開くことになりますよね。

 プロモーションも同様です。どうすれば集客できるかと悩む以前に、まずはYou TubeでもSNSでも、とことん活用することから始めるべきです。その施設にとって、どのような動画をアップすると多くの人の目に触れやすいのかは、試行錯誤を重ねることでしか答えは得られないですから。

――では、その次のステップとして、そうしたDXを“稼ぐ”力に変えるためには、どうすればいいでしょうか。

 観光業がDXによって何を狙うかといえば、大まかには「業務の効率化」と「顧客体験の向上」という2点に絞られると思います。観光はとりわけ後者に重きを置いてきた領域で、これまでは人力によるおもてなしという、アナログの手法で頑張ってきました。そこでデジタルによる業務の効率化が進めば、捻出したリソースを活用し、さらに顧客体験の磨き込みができ、競争力の強化に寄与できます。

 神奈川県の老舗旅館「陣屋」が好例でしょう。「陣屋」では10年ほど前に『Salesforce』(※顧客管理ツール)を導入、徹底的に使うことで、CRM(顧客関係管理)に加え、出迎えや清掃といったワークフローをデジタル化し、赤字経営から見事に脱却しました。そればかりか、そこで育んだシステムを同業他社に販売する新事業まで生み出しています。正しくDX化すれば、ビジネスモデルも自ずと変わってくるという良い見本ですね。

――長らくアナログで成立してきた旅館業ですが、デジタルと意外な親和性があったわけですね。

 同じ領域の中だけでまとめようとすると、どうしても視野が狭くなりますから、2階の段階では他の分野に目を向け、そのモデルを抽象化して借りてくることは大切だと思います。陣屋の例においても、元ホンダのエンジニアだった宮崎富夫氏の製造業の経験が活きていると推察しています。

――その点、NTTコミュニケーションズでは事業共創プログラム「OPEN HUB for Smart World」を10月にローンチしています。観光業界も学ぶことの多い取組だと思いますが、最後にこのプログラムの狙いについて教えてください。

 これもまた、前述の“2階建て”論に通じているのですが、デジタルを徹底して使いこなすという1階部分は自力でやれても、その2階で何をやるかというのを、1つの企業だけで考えるのは難しいことです。同業者ばかりを意識していると打ち手も同質化し、結果として市場がレッドオーシャン化してしまいます。そこで異業種と共創できるプラットフォームを作ろうと考えたのがこのプログラムの基本思想です。

 手前味噌ではありますが、NTTコミュニケーションズは日本の大企業の9割超と何らかの取引を行なっている実績があります。そんな我々をうまく舞台として活用していただき、これまでにない新たな発想やソリューションが生まれる一助になれば嬉しいですね。

 なお、ここでいう「Smart World」の意味するところは、“サスティナブルな未来”であると個人的に解釈しています。観光事業者の皆さんにも、そんな未来を作るために、ぜひこのプログラムを活用していただきたいですね。

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