岐阜県高山市の街がRPGに! ゲーム空間とリアルの融合で地域の魅力を発信
重要伝統的建造物群保存地区に指定される通称「古い町並」や、江戸幕府の行政拠点「高山陣屋」など、古い文化を色濃く残す岐阜県高山市は、1年を通じて国内外から多くの観光客が訪れる人気スポットです。
しかし、観光区域外にはなかなか誘客できず、インバウンド層のさらなる底上げと共に、新しい顧客層の獲得が喫緊の課題とされてきました。
そこで今回、観光庁主導の「来訪意欲を増進させるためのオンライン技術活用事業」に採択された「魅力再発見PROJECT たかやまくえすと ~そして今くるさ~」事業では、高山市の町並をモチーフとしたオンラインRPG(ロールプレイングゲーム)を開発。ゲームの世界を通して地域の観光資源を広く発信し、来訪意欲の増進に繋げる取組を進めています。「たかやまくえすと推進実行委員会」の皆さんに、取組の全容をお聞きしました。
▼レトロな16bitのグラフィックでゲーム世代に訴求
「今回のプロジェクトでは、高山市をモチーフとした架空の街を舞台とするRPGを制作します。観光区域外にある9つの商店街の協力を得て、市内に実在する商店や施設、観光スポットなどをマップ上に配置し、プレイヤーの方にはストーリーを進めながら地域の魅力に触れていただきます。また、地域に伝わる伝説の鬼神『両面宿儺』や伝統工芸品『一位一刀彫』など、まだあまり知られていない観光資源についても発信できればと考えています」(名鉄観光サービス株式会社・犬塚真彩氏)
※公式HPでは、ゲーム配信開始が楽しみになるような「たかやまくえすと」のストーリーや機能をご紹介しております。ぜひご覧ください。
ゲームは「歴史ステージ」や「地理ステージ」、「民話ステージ」など計7つのステージで構成。プレイヤーはそれぞれのストーリーを順にクリアしていくことになります。
では、伝統ある高山市の町並とRPGの世界観を組み合わるこのユニークなアイデアは、どのような経緯で生まれたものなのか。犬塚氏は観光とRPGの親和性について、次のように解説します。
「RPGはゲームの中でもストーリー性に優れたジャンルであるため、地域の魅力を表現するのに適しているのではないかという発想がまずありました。さらに、日本のRPGは海外でも多くのファンを擁し、将来的にはインバウンド需要の喚起にも繋がる期待があることから、今回のプロジェクトが決定しました」
なお、あえてレトロな16bitのグラフィックで画面を構成しているのも特徴の1つ。とりわけ40~50代の第一次テレビゲーム世代にとっては、強く興味を惹かれるコンテンツになるでしょう。
▼ゲームとリアルの融合で来訪意欲の増進を図る
高山市の観光事業者にはシニア層も多いため、オンライン技術を活用した取組が必ずしもスムーズに理解されたわけではありません。それでも革新的な取組が実現した背景には、高山市がこれまで新しいことを積極的に採り入れてきた土壌があります。
「高山市では事業者へのタブレット端末の配布や、QRコードによる地域通貨の導入など、さまざまな取組を行ってきた経緯があります。RPGと言われてもピンとこない事業者の方も大勢いらっしゃいましたが、こうした新しい提案を前向きに受け止めていただける土壌が整っていたのは幸いでした」(名鉄観光サービス株式会社・高山支店 鎌野篤支店長)
結果的に今回のRPGでは、ラーメン店や土産店、宿泊施設など、およそ40店舗の参加が決定。プレイヤーがゲームの中で各店舗にアクセスすると、実在する店主が登場したり、それぞれの公式サイトに移動できたりすることで、リアルとゲームの融合を実現し、高山市の魅力を体験できます。
また、今回のプロジェクトでは、GPS機能と連動させることで、O2O(Online to Offline)の促進を強く意識しています。
「ゲームは高山市以外の地域でもプレイできますが、GPS機能により、高山市内でゲームを起動するとポイントが加算され、それを使って裏ゲームが楽しめるというギミックも用意しています。こうした施策によってユーザーの来訪意欲を高め、リアルでの観光促進に繋げられればと考えています」(犬塚氏)
そのためにゲーム内には、交通手段や宿泊施設への予約サイトへの動線も設けられ、実際の来訪に繋げる工夫もされています。
「現在はコロナの影響により、近隣の東海エリアからの観光客が中心となっています。だからこそ今後、首都圏や関西圏、そして海外からの来訪客を増やすための取組として、今回の事業に対する地域の期待は高まっています。将来的には英語版、中国版のリリースも予定しており、この取組がユーザーの皆さんの旅行マインドを育むきっかけになれば嬉しいですね」(鎌野氏)
リリースは10月上旬を予定。「たかやまくえすと推進実行委員会」ではこの後、地元出身のタレントやYouTuberを起用したプロモーションを予定しています。観光地をRPG化するこのプロジェクトは、きっと大きな話題を呼ぶことになるでしょう。
最後に……
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