高度経済成長期から受け継がれる、大阪・味園ユニバースビルの魅力を、バーチャル空間にて発信!
大阪ミナミ・千日前エリアのディープスポットとして知られる「味園ユニバースビル」は、施設内に大型キャバレー等を擁し、高度成長期から今日に至るまで脈々と大衆芸能文化を発信しつづけてきました。
しかし、味園ユニバースビルを中心とした周辺エリアも、長引くコロナ禍により飲食店は大きな影響を受け、また、文化発信の機会も減少しています。そこで、海外からも注目される味園ユニバースビルをXR技術によってオンライン上で再現し、その文化と歴史を広く発信しようという取組が進められています。
観光庁主導の「来訪意欲を増進させるためのオンライン技術活用事業」の採択事業の1つ「高度経済成長の象徴・大阪『味園ビル』3DVR化プロジェクト」に取り組む「味園ユニバースビル」3DVR化プロジェクト製作委員会の皆さんにその全容をお聞きしました。
▼味園ユニバースビルのディープな世界を再現
味園ユニバースビルの建造は1956年。大型商業ビルとして高度成長期の活況の一端を担ったこのビルは、アメリカのグラフ雑誌で取り上げられるなど、多くの外国人観光客が集まる場所としてよく知られています。「味園」の文字がきらびやかに光るネオンサインは、千日前エリアの象徴でもあり、見覚えのある人も少なくないでしょう。
2015年にはビル内に存在した大型キャバレーを題材にした映画『味園ユニバース』が公開され、いっそう注目されることとなった味園ユニバースビル。今回のプロジェクトでは、この味園ユニバースビルをXR技術でオンライン上に再現することでリアルとはまた異なるアプローチでその魅力を伝えます。
「この企画の背景には、製作委員会の主体である我々COSMIC LABが20年以上前にこのビルに出会い、強い衝撃と共に感じた魅力を広く伝えたいとの思いがあります。今回、同ビルの協力によって特別に入場許可を得て、XR技術を使った撮影が実現しました。そこで、かつてここに存在した巨大キャバレー『ユニバース』をCGで、イベントスペースとして営業している現在の『ユニバース』を実写ベースの3Dキャプチャーで、2つの時代の『ユニバース』をバーチャル空間にそれぞれ構築します」(COSMIC LAB株式会社・高良和泉氏)
ここで積み重ねられてきた歴史、そして現在進行形のオーディオビジュアルライブの2つのコンテンツを軸に、味園ユニバースビルが持つ文化資源としての魅力を発信しようという今回のプロジェクト。ユーザーはオンライン空間上のユニバースを自由に回遊することができ、あたかも現地を散策しているかのような体験が得られます。
また、プロジェクトの準備過程で発掘された秘蔵資料(※後述)の公開や、気鋭の写真家たちが現在の味園ユニバースビルの魅力を撮影した展示等も予定。更には現在の味園ユニバースの最盛期を再現し、現代のクリエイションによるショーを配信したり、1956年当時の味園ユニバースビルの様子を3Dフォトギャラリーで公開したり、さまざまな角度からその魅力を掘り起こします。
参考:現代美術の最前線−タグチ・アートコレクションより 3D ARCHIVE/ARCHI HATCH
▼往時の味園ビルの様子を伝える秘蔵資料も
「味園ビルが刻んできた長い歴史は、現在の味園ユニバースビルを訪ねてもなかなか伝わるものではありませんが、今回の制作では、COSMIC LABの二十余年にわたる味園ユニバースビルとの信頼関係により、ビル内に残された貴重な資料をたくさん見つけることができました。それらの中には、高度経済成長期特有の異常とも言えるエネルギッシュなムードや、多様性を受け入れつつも独自の文化を生み出そうとしてきた独特の感性を感じさせるものが豊富にあります。これらをコンテンツとして生かすことで、時空を超えた魅力をお届けできればと考えています」(株式会社epigram・玉井裕規氏)
先の高良氏も、「制作準備にあたってあらためてビル内をチェックしていたところ、思いがけない秘蔵資料が発掘されることも多かった」と振り返ります。これにより、現代のリアルとはまた違った味園ビルの再現が可能になったわけです。
「今回、オンライン空間に再現するのは、情感あふれるビジュアル資料とオーディオを中心としたノンバーバルなコンテンツです。つまり言語を問わず楽しめるものであり、当時を知る世代はもちろん、若い世代の方にも“こんな文化が日本に存在していたのか”と興味を持っていただけるはずで、幅広い層に訴求する展示になるでしょう。また、味園ユニバースビルが発信してきた文化や歴史に興味を持った方が、現在進行形で形成されていくカルチャーにも興味を持ってもらい、実際にこのビルに足を運んでみようと思っていただけるものにしたいと思っています。アフターコロナも見据え、この取組が地元の方々のネットワークを育み、地域の活性化に繋がれば本望ですね」(高良氏)
一方、体験型コンテンツとして味園ユニバースビルを再現するにあたり、まだ不足している資料もあり、今後12月の公開までいかに完成度を高めていくかが課題となります。
「ライブショーを行なうに際しても、どのような映像や音源で表現するのがベストなのか、多くの選択肢を用意して検討を続けています。技術面についても同様で、このプロジェクトを継続的なものにし、定着させるために最良の手法を考える必要があります」(同)
今では見かける機会がなくなった大型キャバレーという大衆文化ひとつをとっても、昭和ロマンの香りを色濃く感じさせる味園ユニバースビル。戦後からの復興に向かう当時のエネルギーにふれることは、コロナ禍による停滞感を吹き飛ばす、ポジティブな体験になるでしょう。
最後に……
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