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福井県をより魅力的な観光地に。観光アプリ、デジタル商品券、観光客アンケート―様々なデータを活用して観光地経営の変革を目指す

 観光戦略を立案するにもマーケティングデータが乏しく、勘や経験則に頼った商品開発や事業展開が行われていることは、あらゆる観光地に付き纏う長年の課題です。福井県においても同様で、2024年に北陸新幹線の福井・敦賀延伸開業を控えていることから、人流の変化を見据えた観光開発や施策の立案が急務とされています。
 
 そこで福井県観光DX推進コンソーシアムでは、地域イベントのタイミングでデータ収集を行い、得られた情報をマーケティングと観光戦略立案に活かそうと取り組んでいます。

■事業の概要

 コンソーシアムの事務局を担う地域商社の福井銀行、ふくいヒトモノデザイン株式会社・佐竹範之氏は、「本コンソーシアムでは、地域の中核的な銀行、新聞社、行政機関等が、地元のIT企業やエンジニアなどと協働で、『観光の見える化』をしています。これら集積したデータを基に、地域事業者の観光商品開発や観光地の磨き上げに繋げ、地域の『稼ぐ観光』を推進していこうとしています。」と語ります。

■丹南エリアのものづくりを発信する「RENEW」をフィールドにした実証実験

 去る2022年10月7~9日の3日間、鯖江市・越前市・越前町の丹南エリアにおいて、毎年恒例の工房見学イベント「RENEW(リニュー)」が開催されました。これは、越前漆器・越前和紙・越前打刃物・越前箪笥・越前焼・眼鏡・繊維といった7つの産地の工房を一斉開放し、見学やワークショップを通じて一般の人々に作り手の想いやその背景を伝えるイベントです。
※「RENEW」の詳細はこちら>>>https://renew-fukui.com/

画像:「RENEW」開催エリア内の地場産業

 そこで福井県観光DX推進コンソーシアムでは、例年2~3万人規模の集客実績があるこの「RENEW」を実証実験の場に、今後の観光商品開発に活かすデータ収集に着手しました。コンソーシアムの一角を担う福井県観光連盟にも所属している佐竹氏は、取組の前提について次のように語ります。
 「福井県に限った問題ではないですが、これまで観光のデータがあまり蓄積されず、マーケティングをしようにもその材料がないのが実情でした。そこで2022年から、地域内70箇所にQRコードを設置し、来県する観光客にアンケートを行いました。これまでに8,500件ほどの回答が寄せられ、ようやく観光客のニーズや属性が掴めてきたところです」
 
 しかし、アンケートでは観光客の回遊ルートや購買行動まではわかりません。そこで観光客の動向をさらに見える化するために、「RENEW」の場を使ったデータ収集に乗り出したというのが取組の経緯です。

■データ解析により観光産業を効率化

 その具体的な施策の1つが、物販や工房体験などの支払いに利用できるプレミアム付きデジタル商品券「RENEWPay(リニューペイ)」です。これは福井新聞社と福井銀行の共同出資会社である株式会社ふくいのデジタルが開発したスマートフォンアプリ「ふくアプリ」の決済機能を活用したもの。
「これにより、そのユーザーがどこでいくら消費したか、地域内をどう移動したかなど、これまで得られなかったデータを集めることができます」(福井県観光連盟・佐竹氏)

画像:「ふくアプリ」上で提供されるRENEW Pay画面イメージ

※「ふくアプリ」は、福井県民のあらゆる生活シーンを便利にするようなデジタルプラットフォームを目指して開発されたアプリ。以下URLからダウンロードできます。

 見学者が訪れる各工房には、本コンソーシアムの中でデータの収集や分析を担う合同会社basicmathがAIカメラを設置。イベント対象スポットのリアルタイムな集客数やニーズの解析を図ります。
 
 「個人情報の取り扱いなど、制度面での調整は必要ながら、得られたデータを事業者ごとにまとめ、その後の事業支援やDX支援、そしてコンサルティングに繋げられればと考えています。ゆくゆくは観光入込客数と気象データをストックして分析し、入込客数予報を出して観光産業の業務効率化を行うようなことも可能でしょう。そのためにも、まずは現状を把握することが先決です」(同)

写真:店内に設置されたAIカメラとRENEW Pay決済用QRコードのパネル

 また、今回の取組を技術面からサポートするCode for FUKUIの福野泰介氏は、更なる展望を次のように語ります。

 「観光事業に限らず、アプリ開発の源泉はデータですから、オープンデータをいかに多く溜めていけるかが重要です。その意味でエンジニアの育成だって大切なことですし、自治体との連携も必要です。幸い、私が拠点を置く鯖江市は行政のレスポンスが早く、協力体制が整っているので、まずは観光面でこうした施策の横展開を目指し、福井県全体を盛り上げていければと思います」
 
 「RENEW」に対象を絞ってスタートした取組が、いずれ日本各地にノウハウとして展開されていくのか、今後の福井県の取組にも注目です。

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本事業の公式Webサイトでは、他にも各地域で取り組まれている事例を順次掲載しています。
こちらもぜひご覧ください!
【観光DX事業公式Webサイト】https://kanko-dx.jp/
【観光DX事業公式Twitterアカウント】https://twitter.com/digitalxproject
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